別荘地・軽井沢の発展過程の研究 その四

icon_1r_48信濃史学会誌「信濃」、第68巻、3号、2016、掲載

別荘地・軽井沢の揺籃期を語るにはタブーがあります。当時、外国人の不動産取得は禁止されていたので、日本人名義で別荘を取得したのですが、それは脱法的行為でした。明治20年代の半ばには警察が実態把握のために村民達への厳しい尋問を行いましたし、帝国議会でも軽井沢の実態が大きく取り上げられ、時の伊藤博文政権は議会を解散せざるを得ないほどの大騒動に繋がりました。しかし軽井沢の諸著作の底本となっている当時の地元名士による著作には一切、そのようなことは触れられていません。真相が隠されていることは明らかです。
そこで本論文では、上記の底本に頼らず、警察調査報告と土地台帳、そしてショー師の家族内での手紙をもとに、ショー師およびその関係者の別荘取得の実状を検討しました。するとこれまでいわれてきたこととは随分異なる新事実が明らかとなってきました。