浅間山南麓における融雪型火山泥流と追分宿の発展

icon_1r_48東信史学会誌「千曲」 No.150 2012  、掲載

積雪地における火山災害で、最も警戒すべきは火山融雪泥流です。三浦綾子の小説「泥流地帯」に取り上げられた北海道十勝岳融雪泥流1926年5月)はその良く知られた例であり、人口密度の小さな地域でありながら144名の死者・行方不明者を出しました。
軽井沢町においても、融雪泥流を念頭においたハザードマップが公開されています。しかし過去における融雪泥流の記録となると、群馬県側のものだけが記されているため、住民からは、行政は無用の混乱を招いている、との批判が寄せられています。しかし軽井沢町にも冬季に洪水があったとの伝承はあり、また隣町の御代田町ではやはり冬季の洪水により大量の土砂が押し出されて、湯川本川が堰き止められて湖が出現したとの具体的な伝承が残されています。
本論文では、地形学的にその伝承の実在性が確認できるとしました。しかしその後、国土防災技術KKの小菅さんより、私の主張の誤りが正しくも指摘され、伝承の裏付けが無くなってしまいました。しかし伝承の内容は具体的です。そこで再調査を行い、融雪泥流が発生した証拠を新たに見つけた気になっています。早く修正論文を書くべきところ、後回しになってしまっています。
追分宿が、融雪泥流の発生と時期を同じくした御影用水の開削によって、本格的に成立したとの主張は変わりありません。