軽井沢学ことはじめ

 中央こそが貴いという根強い指向

 地方に住んでみると、当然ながら「地方」を考えることが多くなります。首都圏をはじめとする都会が社会の中心であって、「地方」は傍流的、従属的存在に過ぎないのだろうか? 少なくとも書き物で、それを大っぴらに肯定することはないでしょう。しかしながら実際は、中央、あるいは広い世界こそが値打ちのあるものであって、地方はただ都市についていくだけのもの、つまらないもの、という観念は強いものがあります。そうした良い例が「良い学校」の捉え方でしょう。地元のお金を使って運営しているにもかかわらず、地元への貢献度などはほとんど問題にならない。むしろ反対に、いかに多くの生徒を中央の有名大学に送り込み、東京や世界で働く人材を供給するかが良い高等学校を中心とする初等中等学校の基準となっています。そして実際、東京や札幌、仙台、名古屋、京都、大阪、福岡といった地方中枢都市への富ばかりではなく、知の集中は著しいものがあります。先進的な大学やや研究所、シンクタンクなどのほとんどは中央や地方の大都市にあり、そうでない例を探すのが困難なくらいです。先進諸国では田舎町ともいうべき地方の小さな町に著名な大学都市が多く存在するにもかかわらず・・・。

学問と「地元学」

 こうした風潮、状況にあって、地方における知の蓄積が乏しいことは当然です。なるほど中央の職業的研究者が地方でフィールドワークをすることは良くあるでしょう。しかしそれはその地方を理解するためのものではなく、地域を超越した「○○学」を究めることを目的にしています。地方にとっては、一定の知の蓄積にはなりますが、全体の中の一部が明らかにされるのみであり、そのままでは自身の土地を総合的に捉えることにはなりません。そして地方に住む人々にとっては、「○○学」はいわばどうでも良いことであって、ただ地元を知りたいということなのです。
最近は地元学の推進が提唱されています。地方の人達が地元に誇りを持ち、地域の資源を大切に後世に伝え、さらに発展させるべきものを見定めるためには、これが大切ということでしょう。私もそう考えています。私にとっての地元学とは、軽井沢に住んでいるから軽井沢学です。決して軽井沢が有名だからという意味での軽井沢学ではありません。地元学には、「学」がついています。「学」とは、一般には「普遍性」を追求するものでしょうが、この場合は自身の地元への好奇心に応え、あるいは資源を見出し再整理するものも含まれるべきと思います。したがって学術的な論文だけでなく、それに至らない事実の羅列や、曖昧な見解なども地元学であって良いと考えます。
このブログにおいても、この意味で「軽井沢学」を扱いますが、先ずはこれまで発表した論文類を中心に公表していきます。

 私のこと

 15年前に首都圏から軽井沢に移り住んできました。信州には住みたいと思っていたものの、特に軽井沢を好んでいた訳ではありません。というより全く念頭になく、候補に挙がってからも、ブルジョア趣味と言われやしないかと、むしろ避けたいくらいでした。では何故軽井沢に来たかというと、新幹線で東京まで約1時間、また帰りも夜10時まで飲んでいても、その日の内に帰ることが出来るという、単なる交通の便だけが理由でした。仕事が報告書を書く事でしたから、毎日、会社に通勤する必要はなかったのですが、会社から急に呼び出されることもあったからです。
 移り住んでから、軽井沢のことを知りたくなり、本を読みはじめました。多くのことを学んだのですが、一方で、軽井沢がどうして日本の代表的リゾート地になったのか、それとしての今日のステータスを得たのかということになると、ほとんど納得のいく説明を読んだ記憶がありません。「豊かな自然に恵まれているから・・・」、「宣教師達が先鞭をつけ、清い伝統があるから・・・」などが多くの本に書かれていますが、果たしてどうでしょうか。「豊かな自然」を言うなら、他の地域にもいっぱいあります。「宣教師」についても、夏期短期間だけ滞在するだけなのに、それだけの支配的影響力があったのか私は疑問に思います。それらが軽井沢町の公文書や観光案内などで、あまりに繰り返し、繰り返し書かれることによって「思考停止」をもたらしているようにさえ思えるのです。
 私も70才を超えました。人間は社会的動物ですから、歳をとっても社会に何らかのアウトプットを出していきたいものです。しかも社会にご迷惑をかけないやり方で・・・。そこでライフワークとして選んだのが軽井沢学へのいささかの係わりでした。先にも書きましたように私は生粋の軽井沢人ではありません。軽井沢を何も知りませんでした。でも私は信じています。10年位、何事かを一生懸命やれば、一応のことはできると。

●知的財産権について

 本サイトを構成するコンテンツ(テキスト・画像・論文・商標等)は、本サイトの所有者にその知的財産権等の権利は帰属します。
 権利者に対し無断でコンテンツの複製・改変・転用・転載・販売等については権利者の財産権を侵害する行為であり法律により禁じられています。

●リンクについて

 リンクについては基本的には制限しておりませんが、論文や画像ファイルへの直接的なリンクはお断りしております。  リンクする場合には、ページに対してリンクして頂けるようお願いいたします。
 但し、リンク先のページのコンテンツについては本サイトとは関わりないものであり、本サイトの権利者は一切の責を負わないものとします。
 また、本サイトをリンクするにあたって、誹謗・中傷等のそれらに類する行為の為にリンクすることは固くお断りします。

●免責事項について

 本サイトのコンテンツについては、細心の注意を払って掲載しておりますが、その内容について保証するものではありません。
 よって、それにより生じる一切の損害や不利益の責を負わないものとします。